小泉総理のチェコ訪問 日・チェコ首脳会談共同声明

日本国とチェコ共和国の戦略的パートナーシップに向けた共同声明(仮訳)

平成15年8月21日

小泉純一郎日本国総理大臣とヴラジミール・シュピドラ・チェコ共和国首相は、小泉総理のチェコ共和国公式訪問に際し、2003年8月21日にプラハで会談を行い、以下の声明を発出した。

日・チェコ関係の概観

双方は、日本とチェコ共和国の外交関係樹立10周年を祝い、また両国関係が、政治、経済、文化等を含む幅広い分野において着実に進展してい ることに触れつつ、とりわけ拡大して10カ国を取り込む2004年のEU拡大などの欧州における構造的変化の中で、今日、両国関係がさらなる協力に向けて 可能性を広げつつあることを、満足の意をもって確認した。

双方は、2002年7月の天皇皇后両陛下のチェコ共和国御訪問は、画期的な出来事であり、二国間の友好関係及び相互理解を深める上で多大な影響を及ぼしたことを想起した。

2004年のEU拡大は、地域全域の安定に貢献する、欧州における重要な功績の一つであることを認識しつつ、日本側は、両国関係が二国間の 側面においてのみならず、日・EU間の全般的協力という文脈においても、さらに発展することへの心からの希望を表明した。双方は、お互いの利益と、二国間 関係の発展及びEUの枠組みから生じる価値に最大限の配慮を払うことを確認した。

日本側は、日本が世界的レベルで戦略的パートナーシップを構築してきたEUの拡大を歓迎し、日・EU関係にチェコ共和国が積極的に関与して いくことを支持する。チェコ共和国はEU条約の基盤の一部を構成することとなるが、この関連で、チェコ共和国は、二国間のレベルのみならず、EUの枠組み においても、両国関係が発展することを確信する。チェコ共和国は、両国間のビジネス及び経済関係がEU加盟後に強化され、深化することを確信する。

日本側は、ヴィシェグラード4カ国(V4)との協力を拡大する意思を表明した。チェコ側は、この日本の関心を歓迎し、チェコがV4議長国である間に、互いに関心を有する分野における日本との協力に関する提案を、V4グループ内のさらなる議論に付する。

日本は、「アジア・欧州協力枠組み2000」に則った形でチェコ共和国が可能な限り早期にASEMに加盟することを含め、アジア・EU間の対話へのチェコ共和国の参加を歓迎する。

政治的側面及び相互に関心のある国際問題

双方は、二国間関係においても、また既存のフォーラムを最大限に活用しつつ多国間の枠組みにおいても、さらなる協力の可能性を追求すべくあ らゆるレベルにおいて政治対話を強化していく意思を確認した。この文脈において、双方は、主要な国際問題に関して見解と利益の一致をみていることを確認し た。

イラク復興に関して、双方は、2003年10月に開催予定のイラク復興会合に可能な限り多くの国々が積極的に参加するよう働きかけるとともに、イラクの人々により運営されるイラク政府の樹立プロセスにさらなる貢献をさせる意思を表明した。

双方は、核問題を含む朝鮮半島の状況は、平和的かつ外交的手段によって解決されるべきであることについて意見の一致を見た。そして、諸問題に対する包括的解決を模索するため六者会合が開催されることを歓迎した。

双方は、北朝鮮の核問題に対して深刻な懸念を表明し、北朝鮮に対し、事態を悪化させるいかなる行為をも行わないこと、関連するあらゆる国際取極めを遵守し、並びに検証可能な形で不可逆的に、完全かつ迅速な核兵器プログラムの廃棄を行うことを強く求めた。

チェコ側は、日朝平壌宣言に基づき、北東アジア全域の平和と安定に貢献するような方法で、核、ミサイル及び拉致問題等の未解決の問題を包括的に解決し、北朝鮮との外交関係正常化を達成するという、日本の基本的立場への完全な支持を表明した。

双方は、21世紀における国際の平和、安定及び繁栄を促進するため、国際連合の枠組みの中で積極的に協力する決意を再確認し、国連改革、と りわけ、常任理事国及び非常任理事国双方の拡大を含む安保理改革を始めとして、国連改革の早期実現のために共に取り組むことの必要性を強調した。この文脈 において、チェコ側は、日本の安保理常任理事国入りへの支持を重ねて表明した。チェコ側は、2008年から2009年まで安保理非常任理事国になるとの意 思を表明した。

双方は、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散は国際社会に対する重大な脅威となることにつき見解の一致を見た。この文脈で、双方は、ミサイ ル技術管理レジーム(MTCR)及び弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)を通じた努力を含む、この問題に取り組むための多様 な試みにおいて、さらに協力していく意思を再確認した。

双方は、京都議定書が、気候変動に対する国際的取組み強化の極めて重要な第一歩であることを認識し、同議定書の未締結国に対して速やかに締結するよう強く求める意思を確認した。

双方は、気候変動対策の実効性を確保するため、全ての国が参加する共通のルールの構築のために協力する意思を表明した。

経済的側面

双方は、経済的な結びつきの強化が、全般的な二国間関係を維持し発展させるための一つの鍵であるという認識を共有しつつ、近年における貿易と投資の増大を歓迎し、この傾向がさらに加速されることへの希望を表明した。

双方は、日本とチェコとの間の経済関係を促進する上で、EU拡大が肯定的な意義をもつこととなることを期待しつつ、拡大から生じる利益を最大化することの必要性を強調した。この文脈で、チェコ側は以下の意図につき表明した。

日本側は、専門家の派遣により「チェコ投資庁(Czech Invest)」の活動を引き続き支援する意向を表明した。

チェコ側は、日本からの投資は、雇用の創出、技術水準の向上、輸出促進に貢献してきており、またこれらの全てがチェコ共和国の国家経済政策 の観点から歓迎されていることに留意した。日本側は、投資環境改善のためこれまでチェコ側によりなされてきた努力を歓迎した上で、チェコ政府に対し、さら なる措置を取ることを要請した。チェコ側は、外国投資家のための投資環境をさらに改善すべく最大限の努力を払う意向を表明した。チェコ側はまた、日本人ビ ジネスマンに対し、投資環境改善の問題についてチェコ政府の高官と会談する機会を与える用意があることを表明した。

日本側は、「Invest Japan」等の対内投資促進のイニシアチブについてチェコ側に説明し、チェコ側は、歓迎の意とともに、これを十分に活用する意思を表明した。

双方は、1978年11月13日にプラハで署名された科学技術協定の枠組みにおける協力の肯定的な成果に対して満足の意を表しつつ、政府レ ベルの協力の経験をはずみとして、商業ベースにおける科学者及び専門家の交流もまた一層促進されることへの希望を表明し、また双方は、長期的な経済発展を 視野に入れつつ、科学技術の分野における二国間協力にさらなる潜在的可能性があることで見解の一致を見た。この文脈で、チェコ側は、これまでチェコ共和国 に対して供与された日本の技術協力に対し感謝の意を表明した。

双方は、二国間の経済関係を強化するためにさらに協力していく意向と、双方向の観光旅行の増加に対する希望を表明した。これに関連して、チェコ側は、日本とチェコ共和国間の直行便の開設に対する希望を表明した。

双方は、捕鯨問題は最良の科学的証拠に基づいて取り組まれるべきであることを認識しつつ、海洋環境の保護とともに、鯨を含む天然資源の保存と持続的利用の重要性について意見の一致を見た。

文化的側面及び市民交流

双方は、相互理解を促進する上での基盤としての文化交流の重要性を認識しつつ、伝統的なものと現代的なものの両面で、お互いの魅力的な文化 への関心を再確認し、両国国民間の相互理解を深める文化交流を、様々な分野で強化していく意思を強調した。これに関連して、双方は、二国間交流とともに、 特に、日・チェコ外交関係樹立10周年を祝う文化行事と、さらに、2005年日・EU市民交流年を成功裡に実施するための準備を共同で行うことを確認し た。

双方は、「2005年愛・地球博」におけるチェコ共和国の展示場が、最も好評を博するものの一つとなり、両国民の相互理解をさらに強化する ことに大きく貢献することへの期待を表明した。同様の効果が、「2005年チェコの季節(Czech Season)」において、日本の各地で行われるより広範なチェコ芸術の展示においても期待される。

双方は、観光は、国家間の人々と文化を結びつける最も重要な手段の一つであることを認識しつつ、双方向へ頻繁に観光客が行き来することへの希望を表明した。

2003年8月21日、プラハ

(署名)

日本国総理大臣

小泉純一郎

(署名)

チェコ共和国首相

ヴラジミール・シュピドラ